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12.22

 若手による加賀見山の初日は大入りでした。もしかして5公演の全てのお客様がいっぺんに来てしまったかと案じられるほど(笑)

 この人々を育てようとする側はいろいろな思いがあるので、皆さんが皆さん、若手らに指導しようとします。迷う若手。これも必ず通る道ですが、いまは迷わず演出を信じてやるしかないのです。
 しばらくは周囲があれこれと言いたがります。それは彼らにそれぞれ思いがあるからに他なりません。それをすべて聞いておくことが10年後に役立ちます。付け焼き刃は却ってその人を間違えさせてしまいます。下手なら下手のまま、小細工をせずにストレートに演じるのがいい。
 歌舞伎にしろ舞踊にしろ義太夫にしろ数カ月くらいでは穴すらあきません。それが生かすには最低10年前からの仕込みが必要です。ですから演出家の私の仕事は、彼らの持っているものから舞台に載せてもなんとかなるものだけを抽出する作業でもあります。付け焼刃や偽物はすぐにばれてしまうからです。
 そこに歌舞伎のエッセンスや精神を盛り込めばいい。歌舞伎というととかくイメージが限定されてしまいがちですが、それこそ歌舞伎にとっては危険この上もないことなのです。もっと振幅も守備範囲も広いものです。遺産と考えた瞬間、歌舞伎は衰えるものです。

 いま私たちの勉強は今日明日に役立てようと思っても無理です。すべて10年後の自分のためです。
 ああ、だから勉強ですね。いまから10年後の自分を楽しみにしながらー
by nihon_buyou | 2009-12-22 10:46 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言
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