故・古今亭志ん生と自転車に乗った夢ーーー
たぶん晩年のはずだ。だいぶ呂律があやしい志ん生を後ろに乗せ自転車をこいだ。耳の傍でいろんな話を聞かせてくれる。 私があまり喜んだせいだろうか、志ん生は私の肩の上に登ってきた。それでも話をやめない。私が自転車をこげるようになったのは遅く、大学生のころで、だからサーカスみたいな姿勢じゃこげないと言うと、志ん生はそれじゃあアタシがこぎやしょうと言って、私を肩の上にのせるとそのまま自転車をこぎだした。もちろん話はずうっと続けたままだ。 志ん生の話は面白かったが、それよりあの年齢の酔っぱらったような人の肩に乗っているのが危なっかしいし、申し訳なくも思ったりで、話半分どころか声だけしか聞こえなくなっていった。 そのうち、どこかの家に着いて二人とも自転車からおりたが、今度はそこの家のおかみさんに向って志ん生はしゃべりだした。 私がホッとしたら目が覚めた。と、枕もとで志ん生のCDが鳴っていた。晩年の「わら人形」だ。西念のせつせつたる独白に鬼気と愛嬌とがまざって、まるで女性のセリフのようだと思った。 ぼんやりと志ん生の声を耳にしながら、自転車の夢を反芻していると、いつの間にかふたたび眠りに落ちていた。
by nihon_buyou
| 2009-06-04 09:23
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