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万作の型・新舞踊講習会・地唄舞下合わせ

 昨晩、「万作・狂言十八番」を拝見。能「屋島」の小書「奈須与市語」が万作。こういう企画主旨の中では、ふだん何気ないアイの登退場までが気になる。
 学生時代、この演出を初めて見た時、演じてみたいと思った。膝二足で座り位置を変え、切れ目ないセリフの中で役が転換する妙。考えればあまりに単純な様式だが、まるで数式の美しさのようなシンプルさが多くの人々を納得させる。万作の「ひともみふたもみ」あたりで、以前は扇を剃刀の刃のように鋭利にひらめかせ、こちらの肌が裂けた感覚があったのを思い出す。今はその刃は秘められて穏やかだ。
 大槻文蔵のシテにしても、当り前のことながら型の中で動いていく。万作もまたしかり。大きく変更されること、創りかえられることはめったにない。繰り返されていくことへの確認。また大筋ではけっして変わらず、揺るがないことへの自負。観客もおそらく予定調和の中で起きるかすかな、しかも良き変化を期待するのが伝統芸能を見る覚悟なのだろう。
 気がつけば、学生時代にあの演技・演出で驚愕した自分を探していた。万作も変わり、自分にも時間が積もった。型はそんな時間の堆積にも耐えうるものではあるらしい。が、なにかが物足りない。知れば知るほど、やればやるほど「深化」は快感へ転ずる。私は以前、舞踊の稀曲にこだわり、隘路にさまよった苦味を思い出していた。「深化」への誘惑。身を守る型の優位と惰弱。自分に課さねばならない二律背反に改めて粛然となった。
 今日は午後から浅草公会堂の和室で新舞踊講習会。歌謡曲と唱歌「故郷」を振りつけた。夜は、今週土曜上野亀屋で開催の楽千代地唄舞の下合わせ。「越後獅子」「閨の扇」の二曲。ライヴハウスでの地唄舞ーー踊りもシンガーソングライターのように一人一人に向って語りかける時代になっている。
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by nihon_buyou | 2009-02-26 10:28 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

NBAのバレエでーー

 NBAは創立15周年で、バレエリュス100周年にちなんだ公演。(22日所見)「ショピアーノ」はレ・シルフィードでお馴染みのバレエ。音楽に詩情があるから、それだけで舞踊心をそそられる。逆にいえば、音楽を聞けば踊りの動きがそれ以上でも以下でもないのが納得できるので物足りない。日舞でいえば、ちょうど大正期に創られた新舞踊運動の作品群のような感触。妖精や化身に対するロマンチシズムが現代においては、もっと刺激的、挑発的な概念のほうへ移行していることもある。 
 「牝鹿」では男性3人が体育会系の構えに終始するのが、いま流行の漫才師の一人を思い出させてなんとも奇妙。ここに東北の鹿踊りを思い出させるピンクのフサフサたてがみ髪飾りをつけた女性軍、さらにニュウハーフとも場違いKY気味の衣裳と動きのプリマが出るので、当時の美の混沌ぶりが見え透くようだ。ふとニジンスキーのあとさきに、この種の思潮の試行錯誤、混乱が数多くあったことが想像された。
 
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by nihon_buyou | 2009-02-24 10:49 | バレエ・舞踏・現代舞踊 他

梅まつり・麿赤児の男気・にしんそばに 三宿の寿司屋

 湯島天神の梅まつりの奉納舞踊ーー前の演芸が少しずつ伸びたとのことで、われらの時にはすでに20分の遅れ。曲目9番を27分で消化して3分取り戻してくれたと、役員さんに些細なことで褒められる(笑)端唄・歌謡曲を中心にしたプログラムは年輩のお客様に喜ばれる。観客サービスに季刊誌を配布。ポニョを歌っている大橋めぐみちゃんのお祖父さんが音響を担当してくれていて、昔、大宮デン助劇団でご自身も歌っていた話などを舞台裏で興味深く聞く。
 この舞台を終えて、やぐらでのニシンそばはやはり美味しい。つゆのだしの旨味にとろけるような磨きにしんのコントラスト。そばはふだんなら絶対口にしない細く柔らかな麺だが、総体の円やかな味わいに合うのだ。
 夜は麿赤児さんの舞踏。客席で西田堯氏,平野英俊氏、池野恵さんらに会う。いわゆる舞踊的な振りはなく、ヒトの動きの奇態さと肉体の奇妙さが全編を蔽って、存在の切ないまでの哀しさ、いや滑稽さを描出していく。色彩でも白と赤のさまざまな異相をヴィジュアル化する技はいつもながら感心する。それらを含めて、テーマすら笑い飛ばしてしまう男気が嬉しい。蒼く女々しい哲学はいらない。肉体や動き、そして世界に対する日々の発見をにやつきながら遊んでいる大先輩の生きざまが羨ましいほどだった。
 帰りにプロデュサーの新船さんに麿さんに会っていってと言われたが次の店へ行きたかったので早々に辞去。空間の皆と三宿の寿司屋佐藤へ行く。今日の舞台のホントの打ち上げと3月7日のガバロウ前祝い、そして麿さんがよかったのをすべて兼ねてーーここはちょい見にネタケースを覗いただけでは大丈夫かと不安にさせる。が、出すものは上品でこ綺麗に並び、味もなかなかだ。押しつけがましくない。大好きなアサヒと八海山が出されのもありがたい。上質な仕事と舞台、そしてウマい食べ物を堪能できた一日。
 
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by nihon_buyou | 2009-02-22 10:27 | バレエ・舞踏・現代舞踊 他

湯島天神梅まつり・麿赤児さん

 今日一時半から湯島天神の梅まつりで、おどりの空間メンバーによる奉納舞踊がある。昨日の夜はその稽古で録音したはずのMDが記録されていなかったというハプニングがあった。が、舞踊のほうは若手が活躍していて、未熟なりの清々しさがあっていい。
 日舞はプロとアマの境が曖昧というか、無いに等しい状態にある。その為、さほど芸がなくても、人間関係や押しの強さで舞台を獲得していることが結構多い。かく言う空間でもその傾向が皆無とは言えない。やはり内部の人間関係もキャステイングに微妙に影響を与える。これも生存競争の一つかもしれない。
 舞台のあとは近くの櫓という店でニシンそばを食べて打ち上げをするのが恒例だ。そして、今晩は舞踏の麿赤児さんの公演を見に世田谷パブリックまでみんなで出かける。ちょっと楽しみな一日だ。
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by nihon_buyou | 2009-02-21 09:24 | バレエ・舞踏・現代舞踊 他

天井にあるアオゾラ(ヴィーナスフォート)

 レンタルDVDの広告で「24」のシーズン7が作られていたのを知った。6の終わりが主人公ジャックバウアーの虚無があまりに切なく、虚構と知りつつ切歯扼腕した(笑)のを思い出し、早く見たいと期待した。
 河本紫葉さんのバースデーでヴィーナスフォートへ行く。天井に白い雲が浮かんだ青空が続く。ジムキャリーの映画「トゥルーマンショー」を思い出す。人間の一生が管理されているというイメージ自体が、作られた天という虚構を生んでいる。東洋人にとって天は自然の代表であり、ときに神であったりする。だから、その根源的な畏敬からは天を侵犯する気にさせる発想へは飛躍しずらい。
 一方、イムスジョンの「アメノ中ノ青空」では、傘の内側に雲と青空が描かれているのがいかにもオシャレで、放映後日本の街角でもあの傘をちらほら見かけた。こちらのほうは、若者・女の子特有の「カワイイ」宇宙ーヴィーナスフォートの青空はオシャレな傘なのか、それとも現代人を操作管理するものの存在を主張するメタファーなのかーーー
 そんなことを考えながらの帰り道に夜空から雨が降ってきた。傘も管理者の存在も忘れて、お気に入りの洋服が濡れないようにと、コートの前を掻き合わせ襟を立てた。
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by nihon_buyou | 2009-02-20 08:36 | 映画・音楽 他

駒之助師とのお七・「銘柄」という言葉を知らない店員

 午前中稽古で、なんとか会主さんらの振り付けを強引に終わらせる。 
 午後から3月7日春の会のつぼ合わせ。なんと一時半から9時半までかかる。やってない演目がいくつもあるから、当日は延長料金かと、途中からそのことが気になり始める。テープ演奏の多い現状の中で、生演奏でやれることはなにより有難い。義太夫の竹本駒之助師の語るお七はあまりに愛らしい。素人さんの踊りにお付き合いしてもらえて申し訳ないことながら、後見に出ていても思わず太夫の床を振り返りたくなったり、こちらまで内足になってしまうほどだった。
 終わったあと、田中小道具の上野さんや市川段翔さん、内の面々らと赤羽のちゃぽんにて飲む。昨日一昨日の二日間飲んだ店では、ビールの「銘柄」という言葉をしらない店員が二日続けていたのにさすがに呆れたり驚いたりしたが、ここではそれがないのが助かる。 
 誰でもアルバイトで働ける時代だが、それだけに仕事の専門技術・知識や、いやそれ以上に勉強などせずともお金になる傾向が現代?自分の腕に技術や才能を生かせるようになって初めてそこで何十万というのが私たちの仕事。、それまでは0円時代が長く、だからこそそれが未来の自分への励みになった。おそらく彼らにとっては居酒屋は時間売りでしかないのだろう。が、どんな時間でも自分磨きの材料で楽しんだらいい。「銘柄」という言葉を知っただけでもその日はバイと料にオプションがついたようなものだ。不愉快そうな顔をする暇があったら、自分の「銘柄」磨きをすればいいんだがーー
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by nihon_buyou | 2009-02-19 10:49

日舞界では皆悩む

 朝、文化学院の今年度最後の授業。テキストなしで、漢才・和才・洋才の話など。一年のまとめにはなった実感。
 一時から松竹衣裳で3月7日春の会(浅草公会堂)の衣裳見。朝から食事とらず。新富町で10分の隙間できたので、コンビニでおにぎり。人通り絶えず、ついビルの谷間に駆け込み、頬張る。この姿はあまり見られたくはない。衣裳決めながら、大西重役から明日香先生が倒れて入院の報がいま入ったとのこと。 
 明日香良家元とは、山本ひさし師存命中にご紹介受け、かれこれ20年以上は後見をさせていただいている。しかも3月1日には発表会がある予定だ。その依頼の電話で「もう歳だから、この会を最後にしようと思う}と言っておられたのを思い出す。かつらの酒井さんのご主人も具合悪く、噺家さんらの鹿芝居には来られない様子。前日には、衣裳大阪屋さんの堀越氏の葬儀があったこともこのとき知る。
 衣裳見、予定より時間かかり2時間。久良岐能舞台の黒岩氏との待ち合わせ、30分遅刻。前回の評判があまりに良かったので第2弾はなにを???知恵をしぼる。それにしても、主催の神奈川では日舞は観客が入らないこと、切り口が難しいことなどで、あまり手をつけるなと申しわたしがあったほど。これは神奈川だけでなく、日舞界全体が真剣に考えなければいけない問題。出演者をおおぜい出して、そのノルマや、弟子や業界の中だけでチケットをさばいて満員になったと自分を誤魔化していてはいけない。個人的には皆にその思いはある。ただ師匠や体制の大きな流れの中で自分の位置を守ることがどうしても最優先になってしまう。いわく師匠・家元・流儀・協会・出世・名誉欲・経済etc.なによりもこれらの人々は踊りが好きだから、場さえ与えられると、つい種々の疑問も不満も忘れて舞台の時空に身を捧げてしまうのだ。ここで一歩待つ勇気、身を捨ててこそうかむ瀬もあれのその新しい世界について、そんな人々といつか腹を立ち割って話しあってみたいと思っている。
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by nihon_buyou | 2009-02-17 09:29

久々ブログ・朝丘雪路の先代萩・鹿芝居

 夜中2時に起きて、能楽ジャーナルの原稿。
 午前10時、国立能楽堂で幸円次郎追善能ーーー梅若万三郎の「朝長」を見る。小書に懺法とワキの語がつく。140分もかかる。前シテが丁寧で実にいい。
 1時半、いけぶくろ未来座に移動した「先代萩」これが東京での公演の最後。朝丘雪路さん、林与一さんはじめ出演者に別れを告げ、今日から初日の鹿芝居へむかう。題材が「らくだ」なので、噺家さんに危なげがない。化粧や着付けを直して早々に帰宅。さすがに疲れる。こんな時に久々のブログを再開なんて、どこか異常な気がする。
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by nihon_buyou | 2009-02-11 18:04 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言