カテゴリ:映画・音楽 他( 6 )

ハゲタカに魅入られて

 原稿に行き詰って、思い切って映画「ハゲタカ」を見に、木場へ行く。
 投資の世界は未知だが、前作の折、少しだけ本などを読んだこともあってか、理解に困難を要することはなかった。
 何よりも生き方や価値観は異なってもこの作品は、私に勇気とやる気を与えてくれた。
 どうしても仕事柄、綺麗ごとを選びがちな日常にいるので、虚構とはいえ、生なましいマネーへの執着やゲームのありさま、市場の動向に一喜一憂する人々がスリリングに目に映った。時に真逆の世界は自分の肌に針を刺すような痛みと快感を与えてくれる。

 夜、来週大阪である楽正師匠追善の下合わせで、楽千代さんの「都見物左衛門」に立ち会う。宇治はる師匠の御一行の地は浅草5階の部屋の空気を凛とさせてくれる。
 上方舞である以前に狂言ネタを歌舞伎舞踊で移した曲だから、地唄舞とは異なる華やぎが作品としてはあったほうがいい。狂言のとぼけた洒脱と、歌舞伎のレヴューの匂い。大仏の描写で本家狂言のマイム騙り芸、万歳の件は題名にあえて「都」と関したことからも歌舞伎の若衆芸を意識すべきだと思い、楽千代さんにもそれを伝えた。

 今日は稽古やら突然誘われた芝居やら、夜は打ち合わせ方々の食事など…いろいろ準備や企画書なども合間を縫って…
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by nihon_buyou | 2009-06-17 08:07 | 映画・音楽 他

バッハと歌舞伎

 ヴァイオリンの三葛牧子さんとビクターの私市さんと共に舞台創造研究所へ赴く。
 竹柴所長が9月の歌舞伎にヴァイオリンを入れることに積極的な賛意を示してくれているのがありがたい。
 バッハの独奏曲は聴き方、演奏の仕方では気だるいバイオリン演歌のようでもある。その俗っぽさと典雅さの同居。だから、私にとっての第一候補がバッハだと話せば、三葛さんは即座にパルティータですねと反応してくれる。
 3番はバラエティに富んでいるが、軽快すぎる。私としては2番のアンニュイさが与三郎には似合う気がするが、素人の付け焼刃な意見だから、彼女に全面的に頼ろう。
  
 そんなこんなで、ここ数日はパルティータが部屋では鳴り響いている。天才少女と言われたヒラリーハーンの19歳の時の演奏だ。バッハのおじさん臭さを堂々と出してくれてるのがたまらなく、いい。
 なんて、バッハ愛好者からバッシングされそうだから、このへんにしておこうー。またも音痴を露呈してしまったか…
 
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by nihon_buyou | 2009-05-09 11:13 | 映画・音楽 他

カラヤンとグールド

 カラヤンとグレン・グールドが奇跡的出会いを果たしたベートーベン「ピアノ協奏曲第3番ハ短調」のライヴ(1957年)が初の録音盤になり聴いた。
 グールドにしては刺激的でない演奏で、のちにバーンスタインに主張を譲らなかったあの演奏と比べても天地の差があるほどおとなしい。
 カラヤンとグールドはいろんな意味で異質なはずだが、不思議と深く長い交際を続けていたことを今回のCDの解説で知った。31歳でスタジオ録音をいっさい止めてしまったグールドと、クラシックをレコーディングするなんて邪道だと非難を受け続けても晩年に至るまでそれにこだわり続け、凝りに凝った映像にまで音楽を残したカラヤン。
 いま日舞で使う小さなCDラジカセでこの両雄の歴史的名盤の音を聴きながら、もっとちゃんとしたデッキでなければ失礼と思いつつ何度もそのまま再生を繰り返してしまう。音痴とはまさにこんな私のような、だらしないヤツの為にある言葉かもしれない。
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by nihon_buyou | 2009-05-03 11:51 | 映画・音楽 他

清水由紀子よ、お元気ですか?

 清水由紀子が「スター誕生」のオーデイションで、ギターを弾き語りした姿を今でも覚えている。あの時、同時に合格し審査員のスカウト札を多く集めたのが後のピンクレデイーだ。
 その時の清水はジーンズ姿で体から大きなギターがはみ出している印象だった。愛くるしいまでの笑顔だったが、そのキラキラした目はおどおどと何かに脅えているようで、その初々しさが同時合格のPLの垢抜けない田舎くささとは違っていた。
 ところがPLは一躍大スターになった。清水の晴れ晴れしいデビュウを期待していた私は1曲目の「お元気ですか?」を聴いて、少なからず落胆した。特に最後の「来てくだァさい~」での転調には肩透かしを食う思いがした。もちろんそれが,会えなくなった人との再会に希望を託した技巧であることは想像がつく。が、私には希望というより物足りなさ、頼りなさにしか受け取れず、逃げずにもっと高らかに歌い上げてのコーダを期待したものだった。しかし、好感度は抜群でもインパクトの薄い彼女の売り出しとしてはこれが精一杯だったのかもしれない。
 その清水がバラエテイーに転身して、当時の危うさやとまどいの片鱗もないくらいの明るいキャラでの再登場が、私を内心またもがっかりさせた。これも生き方ー別段、すれ違ったこともない一個人の趣味に合わせる責任は清水にあろう筈もないし、彼女がオーデイション当時にかすめた一瞬の表情の幻を追う人間の存在なんか知るすべもなくていい。
 が、私は今回のニュースを知り、あの時の脅えの表情の意味が理解できたような気がした。明るく素直、家族思いという殻を与えられた彼女の人生。ニュースショーなどでは今回の結末が家族介護の現況への問題提起に転換しつつある。ニュースネタとしては確かに世間に与えるインパクトはある。が、それとは別次元で、私はこの結末とあの合格の瞬間の表情とを重ね合わせて思わずにはいられないのだ。
 私はあの時清水の魂の記憶が、課せられたこの日までの人生図を逆走したために一瞬の脅えの表情を生んだと考えるようになっている。その証拠が「お元気ですか?」の転調の物足りなさであり、一方でスター街道を爆走したPLとのあまりの相違にもつながる。同時スタートでも、えてしてある人生の隔たり。とりあえずは多くの人に知られ、相応の仕事もある中でタレント業を引退せざるをえなくなった事情を今回報道でしらされた。清水の魂はあの時、すでにこれらを全て感知していたのだろう。それほどに彼女はピンスポの中、この未来にうち震えていた。届きそうで届かない梢の実ー
 清水由紀子のどこか物足りない結末は、あの時の脅えと転調の歯がゆさという形ですでに予告されていたのだ。一面識もなく、また特別に彼女のファンでは決してなかった私にこれほどはっきりと記憶させた印象。ここにはメッセージがあると考えざるをえなくこれを記した。
 明るく、家族思いのいい人という世間的評価をすませた彼女はいま、脅えのない新しい世界でデビュウを果たし、転調しないですむ「お元気ですか?」を高らかに歌い始めているに違いない。(合掌)
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by nihon_buyou | 2009-04-23 09:46 | 映画・音楽 他

コラージュを聴く

昨日の夜は公園通りクラシクスで三葛牧子さんがヴァイオリンで参加しているCollageのライヴ。箏を中心にピアノ、ヴァイオリン、ギター、ベースによるユニット。
 第一部は音が伸びきらないところ、Aメロは良くてもBやサビへの発展がもう一つで不完全燃焼の曲などあり、不満が残ったが、第二部は彼らの特徴がよく出て体中にサウンドが共鳴する感があった。
 曲の配列、特に最終曲からアンコールにかけてがいい。箏の軽やかさ、音色の自在さをアレンジが引出し、またヴァイオリンとの相違を際立させていることなど、音楽の新しい地平が開けた思いだ。
 残念ながら皆の気さくな人柄がコンサートへ行った観客への飛翔感、特別な時間を演出してくれない恨みが残る。気さくさは彼らの知名度が上がってからで、それまではスタイリッシュであったほうがよい。あとはヒットが誕生すること、そしてスタイリストをつけることなどか。
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by nihon_buyou | 2009-04-15 08:41 | 映画・音楽 他

天井にあるアオゾラ(ヴィーナスフォート)

 レンタルDVDの広告で「24」のシーズン7が作られていたのを知った。6の終わりが主人公ジャックバウアーの虚無があまりに切なく、虚構と知りつつ切歯扼腕した(笑)のを思い出し、早く見たいと期待した。
 河本紫葉さんのバースデーでヴィーナスフォートへ行く。天井に白い雲が浮かんだ青空が続く。ジムキャリーの映画「トゥルーマンショー」を思い出す。人間の一生が管理されているというイメージ自体が、作られた天という虚構を生んでいる。東洋人にとって天は自然の代表であり、ときに神であったりする。だから、その根源的な畏敬からは天を侵犯する気にさせる発想へは飛躍しずらい。
 一方、イムスジョンの「アメノ中ノ青空」では、傘の内側に雲と青空が描かれているのがいかにもオシャレで、放映後日本の街角でもあの傘をちらほら見かけた。こちらのほうは、若者・女の子特有の「カワイイ」宇宙ーヴィーナスフォートの青空はオシャレな傘なのか、それとも現代人を操作管理するものの存在を主張するメタファーなのかーーー
 そんなことを考えながらの帰り道に夜空から雨が降ってきた。傘も管理者の存在も忘れて、お気に入りの洋服が濡れないようにと、コートの前を掻き合わせ襟を立てた。
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by nihon_buyou | 2009-02-20 08:36 | 映画・音楽 他