カテゴリ:伝統芸能・日本舞踊・能狂言( 112 )

2.5

 お酒の量がぐっと減ったせいで快調と思っていた昨日の朝ーー小さな厭なことを耳にし目にしたせいで半日、どんよりと心に雲がかかっていました。

 ふと気分転換にとTVをつけたら、朝青龍の引退ニュースが報道されていて、他人事とは言いながらなんとはなしに気がかりなことの一つが決着を見た思いがしました。
私の周囲にはこの引退騒動について、ブログには書かないようにという冗談めかした忠告がありました。また私が調子にのって何を書くかわからないからでしょう(笑)
 
 しかしその是非はともかく、伝統にまつわって、それがわかるわからないはともあれ、一般の人々までが発言しまた発言をゆるされている時代に、舞踊界からコメント一つ発せられないことや、また求められないことは危惧されるべき事態ではないでしょうか。
 まずはそれほどに日舞界が社会的興味の低い世界であること、と同時にコメントを求めたところで差し障りのない返事しか返さない体質が衆知されているからでもありましょう。

 私自身も見解や好き嫌いはありますが、こういう時こそ皆がふだんは何気なく通りすぎてしまう相撲の世界や、さらには日本の伝統を考えるいい機会だと思うのです。私もたった今「伝統文化新聞」に相撲のエッセーを書き、いろんなことを発見しました。その全てを書くことはできませんでしたが、伝統の世界で利口ぶって事なかれや口をつぐんだ無批判になる前に、社会が興味を示した関心事は何処にあるのかを再検証することは、私たちをもう一度外の風に曝し、身を確認することになるのではないでしょうか。
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by nihon_buyou | 2010-02-05 09:53 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

1.16

 なんと昨日もお酒抜き。これは最近では驚異的記録です(笑)
 そのせいか体が軽い。大好きな早起きにも戻れます。酒よ~どうしておまえをあきらめたらいいの~ひばりさんの「悲しい酒」を地でいっていた昔が懐かしいーなあんて言いつつ、今日は少し飲む約束ですから、あまり大きな声では言わないことにしておきましょう。

 昨日は文化学院の一月始めの講義。桂米朝さんの「らくだ」のDVDを見ながら、わやわやと話す。
夜は野村狂言座。痛々しいまでに老いて見える万之介に引きずられてか、他のトーンが下がるのがどうしても気になる。組み合わせ、配役の配慮をすれば、いつぞやの「無布施経」のような人の心の善悪貴卑を合わせ表現できるいい舞台が見られるでしょう。
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by nihon_buyou | 2010-01-16 07:59 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

古典鑑賞はただの思い出か

 正月のTVは古典芸能の番組が多いので嬉しいですね。
 内容はさることながら、中でのコメントにどうしても思い出話が多くなるのがいささか気になります。
 
 もちろん古典がそれぞれ個人の中に鮮烈に蘇ることが思い出になるのは悪くはない。しかし、過去の舞台の思い出話ばかりで歌舞伎のなんたるかを語ったり、知った気になるのは危険なことです。それは思い出話を語ることと評論することが安易に結びつきやすいジャンルだからでもあるんですね。

 名人芸を見たことやその感動を語るだけでは批評でも評論でもありません。コメントにしても、それを見る時の新たな指標を示してこそ古典は常に再生されると思うんです。

 TVでのコメントはもちろん文章を書くときのそれとは異なりますが、形の違った批評行為に他なりません。視聴者を新たな視点でナビしてこそ古典ファンを広げることにつながるはずです。
 
 そして何より、古典芸能愛好者も半可通を気取ったり、趣味的隘路にいられる自分に満足せずに、広い視野で自身の人生や世界との関わりの中でそれらを育ててほしいと願うのです。
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by nihon_buyou | 2010-01-03 07:16 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.27

 お陰さまです。歌舞伎も無事千秋楽。いろいろありました。演出家としては、幕が開いてしまえば後はお任せでいいのに、何故か毎日のように行かねばならないような流れになってしまいました。

 昨日は次女常世の誕生日と入籍を兼ねた小パーティを赤羽でやりました。婿の掛巣くんから改まって籍を入れさせてもらいたいという挨拶を受けた時はさすがに照れと面喰らうのとが同時で、自分でも何を言ったのやら…この日の入籍を知らされてもいたのに今更改まったので驚いただけです。

 荒木一郎さんのクリスマスパーティに行ってきました。来年、品川ホテルパシフィックが改装?されるとかで、ここでの催しは今年が最後とか…
 始めはあまり目新しくもないマジックが続き、いささか辟易しましたが、松元ヒロさんのお笑いからは大いに盛り上がりました。最後に荒木さんの歌。
 あの鼻歌のようなフレーズとプライベートな旋律が心にいくつもの記憶を甦らせてくれました。一緒に行ってくれた井上さん、小澤さんもたぶん同じ気持ちだったのではないかしらん。
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by nihon_buyou | 2009-12-27 11:29 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.23

 昨日の若手公演4回目はようやく初日が出た感がありました。
 
 演技は歌舞伎ははじめてという人々ばかりですからまだまだですが、それでも仇討を成し遂げたお初が尾上の魂に向かって頭を下げると、熱い思いが伝わってきました。テクニック的には未熟なところがあるにも拘わらず、魂が共振を起こさせるようでした。

 さあ、若手は今日が楽日です。私はそれを見て、彼らの打ち上げ尻目に森下洋子さんの「くるみ割り人形」と会いに行きます。そして、もしかしたら2次会に戻るかも!?

 天気も上々!うつされかかっている風邪もなんとか食い止めて、このまま外へ放り出してしまう所存です。


 人間は感謝が大切なのですが、してもらうこと、愛されることが当たり前になって麻痺してしまうことがありがちですね。

 私たちのように芸で育った人間は、必ず師匠への礼をまず第一に教えられ、とことんそれを実践していきます。ある意味では、心からそう思えない時でも型としての感謝、礼を捧げます。
 ですから、それさえしておけば万事うまくいきますし、自分も安心してしまいがちです。
 しかし、特に人から可愛がられつけている人や、面倒みられ慣れてしまうと、どこか感謝の念にも隙間風が吹くものです。すなわち、そんなつもりになってしまう…

 人がもう一段グレードアップするには、そういった型や習慣を思いきって捨ててしまうことも時には重要になるようです。
 例えばダイエット一つにしたところが、始めはある程度まで痩せられてもそれ以上はシェイプアップ出来なくなる時点がきますね。これが人間や芸の成長にもあるわけです。

 そんな時はどうしたらいいのか…それには、すでに自身の無意識下にまで潜り込んで当たり前のようになっている習慣を引きずり出すしかありません。
しかし、これは残酷でつらい仕事です…

 私が26歳のころ、それまでの全てを変えようと思った時の笑い話ですがーーー尊敬する出版社の社長さんと毎日のように居酒屋へ通い、カウンターで泣かされました。そんなある日、遅くなって会社へ泊めてもらったのですが、朝起きたら、当たり前のことですが歯ブラシが無い!今のようにコンビニの無い時代です。するとその社長が「鼓登治、これを使え」と言って自分の歯ブラシを差し出したのです。

 それまでの私にとっては驚天動地の出来事でした。なぜなら、他人の箸や茶碗を使うのも、友達同士がよくやっていたコーラの瓶を交互に口飲みするのさえ出来ない潔癖症?だったのですからー
しかし、社長はそんなやわな私を見抜いていてわざとそうしたのだと思いました。もちろん私を可愛がってくれる思いがあるから出来たのも事実でしょうが、それにしても歯ブラシを貸すのはご自身にとってもあまり気持ちのいいはずはありません。

 私はためらわずにその歯ブラシで歯を磨きました。ちょっとしょっぱかったのを今でも覚えています。その時から自分の中で大切にしていたものがガラガラと音を立てて崩れていくのがわかりました。悲しかったけど、あんなにつまらないことを大切にしていた自分とはさよならができた瞬間でした。
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by nihon_buyou | 2009-12-23 10:06 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.22

 若手による加賀見山の初日は大入りでした。もしかして5公演の全てのお客様がいっぺんに来てしまったかと案じられるほど(笑)

 この人々を育てようとする側はいろいろな思いがあるので、皆さんが皆さん、若手らに指導しようとします。迷う若手。これも必ず通る道ですが、いまは迷わず演出を信じてやるしかないのです。
 しばらくは周囲があれこれと言いたがります。それは彼らにそれぞれ思いがあるからに他なりません。それをすべて聞いておくことが10年後に役立ちます。付け焼き刃は却ってその人を間違えさせてしまいます。下手なら下手のまま、小細工をせずにストレートに演じるのがいい。
 歌舞伎にしろ舞踊にしろ義太夫にしろ数カ月くらいでは穴すらあきません。それが生かすには最低10年前からの仕込みが必要です。ですから演出家の私の仕事は、彼らの持っているものから舞台に載せてもなんとかなるものだけを抽出する作業でもあります。付け焼刃や偽物はすぐにばれてしまうからです。
 そこに歌舞伎のエッセンスや精神を盛り込めばいい。歌舞伎というととかくイメージが限定されてしまいがちですが、それこそ歌舞伎にとっては危険この上もないことなのです。もっと振幅も守備範囲も広いものです。遺産と考えた瞬間、歌舞伎は衰えるものです。

 いま私たちの勉強は今日明日に役立てようと思っても無理です。すべて10年後の自分のためです。
 ああ、だから勉強ですね。いまから10年後の自分を楽しみにしながらー
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by nihon_buyou | 2009-12-22 10:46 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.16

 今日はなんと赤羽のカギを忘れてでかけてしまい外で30分ほど誰かの到着を待ちわびる破目に相成りました。昨日、芝居の大道具さんや音響、照明、制作の人々21名で遅くまで飲んだのが尾を引いて?の体たらくです(笑)

 午前中稽古をすませ、午後は若手公演の総ざらい。最後の勢いのせいか、一所懸命はいいのですがはみ出しかけた人もいて、やはり不安定です。
 まあでも、その危うさが思わぬいい結果をもたらすこともあるので、後はみんなのエネルギーを信じて、成功を祈ろうと思います。もちろん、これですべてが終わったわけではありません。これからは現場の空気との馴染みです。
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by nihon_buyou | 2009-12-16 18:16 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.15

 芝居もいよいよ中日ーいろんなジャンルの人々が歌舞伎に向かって突進しています。
 そのため、それぞれのジャンルでの習慣の違いなどがあって、微調整を要する時があります。それもまた自分の習慣のよってきた部分を確認するためのいい材料になったり、私には刺激になりますが、逆に許容できない人も出てくるようです。

 話は違いますが、昨日は朝丘さんのごちそうで三笠会館で中華をいただいてきました。亀ゼリーなんてものを頂戴いたしました。歯ごたえと薬草のような香りのある一品でした。

 今日は北千住1010シアターの最終日です。だいぶ苦労をかけた大道具さんらの慰労をしようかと考えています。
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by nihon_buyou | 2009-12-15 05:04 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.15

 今日明日の12,13日は水戸へ行ってきます。
 叔母の門弟・琴江さんの会です。

 そのため、今日夕方からの若手のお練りには参加できません(下北沢)晴れ男の私がいなくとも天気はなんとかなりそうでよかった!みんな頑張れ!
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by nihon_buyou | 2009-12-12 08:07 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言

12.11

 本公演と同時進行だった若手による公演の稽古もいよいよ大詰。
 昨日は終わってから出演者数人と屋台のおでん屋へ。女性陣は屋台おでん屋そのものが初体験とか。

 ウキウキ盛り上がっていると、常連のお客様らと会話がはずみ、肌ケアの試供品をいただいたり、挙句にはチケットまで買っていただく運の強さ!ありがたいことです。

 昨日の〆はそういう気分のいいチケット話で良かったのですが、それ以前はこのチケットが売れないことから端を発したご注意やら仲裁やら、さらには知らないうちにチケットを当方の関係から売りさばくちゃっかり屋に気分悪くする一幕までいろいろありました。
 すべては「あいさつ」の仕方一つですね。まあそれがなかなか難しい。けれどもなんでもやってみて、失敗して上達すること以外に方法はありません。
 それに加えて水天宮様からいただいた今月の言葉に「人付き合いの奥の手は献身だ」といった内容でした。わかる気がしますね。

 役者や舞踊家は表現を磨きながら、一方でチケットを売りさばいたり仕事を探したりといった泥臭い仕事も同時にこなしていかねばなりません。しかし表現も営業も自分を卑しくしてはならないものです。
 二つのことは一見すべてを曝け出すことと思いがちですが、実は自身に蓄えることに尽きています。
大切な経験、感性、勉強をどんどん蓄えていけば自然と浮力がつき、氷山は海上に浮かびあがってくるのと同じ道理です。自分を出そう出そうとあがけば必ず沈んでしまいます。毎日毎日が稽古なのですね。
 営業も同じこと。チケット売る時ばかり、相手が必要な時ばかり寄っていくからうるさがられるのです。また知らぬ間に道を踏み外したりもします。ふだんから人間関係を大切にしていれば、それが蓄えとなって氷山は浮かびあがってくるものです。隣の氷山の上前をかすめとって自分の上に乗せても、実はその重みでその分、あるいはそれ以上の沈みや転覆を覚悟しなければなりません。

 すべて表現は自己主張などというバタ臭いものでなく、自己を養ううちに自然発生するものでなくてはなりません。個性などという大海に浮いた湯あかのようなものを信じる前に、まずは大海に身を投じ飲み込んでみることです。
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by nihon_buyou | 2009-12-11 05:43 | 伝統芸能・日本舞踊・能狂言